その出会いはあまりにも衝撃的でした… 今では神格化されていると言っても大げさでは ない、2ボタン縦型スクロールシューティングの草分け、ゼビウス(Xevious/namco 1982)。
ゲームだけではなくゲームデザイナーにまで及んだその神懸かり的なブームは、ニューア カデミズムをも巻き込み、一種宗教じみた感すらありました。KLFというテクノユニットは、 後にSEGAのソニック・ザ・ヘッジホッグを神と崇めるといいますが、それ以前にファード ラウトに神は居たのでした。
ちょっと大袈裟な書き出しになってしまいましたが、それくらいこのゼビウスというゲー ムがアーケードゲーム界、また、後に発売されるファミコンをも含むコンピュータゲーム 界に及ぼした影響は絶大でありました。
まずは、私とゼビウスの出会いから書きましょう。そう、なぜ衝撃的であったかを。
その運命となる日、私は当時下宿していた関係上、2日に1回という貴重なお風呂を頂い て、夜の10時頃、当時の行きつけのゲームセンター"イエナガ"に日課のように 自転車を飛ばして行きました。風俗営業法が改正される前のこの頃は、まだゲームセンタ ーも24時間営業であることが許されており、そういう時間から出向いても十分な時間遊ぶ ことが出来たのです。
ゲームセンターに到着し中へ入ると、いつもの常連達が1つの台を囲んでいました。実際 は、プレイしていたのが、前回のディグダグの回に出てきた、"上手い人"DIG さんとその友人と思われる人であり、ギャラリーとして取り囲んでいた2、3名がパチン コ屋から帰宅途中にここへ立ち寄ることを日課とする私の知り合い達でした。
どうやら新しくゲームが入ったということだけを聞き、画面に見入るとそこにあったのは 何とも言えない独特の色合いとSF的なキャラクターで作られた縦スクロール型のシューテ ィングゲームでした。それまで、シューティングというと宇宙をイメージした黒い背景で 固定画面が主流というのがお決まりでしたが、このゲームは明らかに今までのシューティ ングゲームとは違う雰囲気を持っていました。
そして、さらに画面を覗き込んでいると、降り注ぐガラスの雨、花火のように飛び散る黒 い物体、宙に浮く巨大な要塞、ニョキニョキと生えてくる謎の塔、破壊できるかどうか分 からない回転する妖しげなモノリスの様な板状の物、ダンスを踊るかのようにフォーメー ションを組む装甲車… と、神秘的で、そして変化のある攻撃が次々と繰り広げられ、そ のインパクトにしばし圧倒されていました。
しかし、違った意味でも明らかに何かが変でした。プレイヤーがなかなか死なないような 気がしたのです。いや、だからこそこの激しい攻撃を見ることが出来ている。また、ソル バルウに動きが無いことにも気付きました。
気が付くと、そこには、後に15エリア、16エリアと呼ばれるゼビウスの中で最も難関とさ れる場面に差し掛かっていました。ギャラリーと話をしてみると、何かバグみたいな感じ に陥って操作が変になってしまったというような雰囲気でした。
なんと入荷日初日に、あるバグによって、いきなりゼビウスというゲームのクライマック スの場面を目撃することになってしまったわけです。
後にこの様なバグがゼビウスではある頻度で起こることも徐々に分かってきますが、それ にしても目の前に展開されている敵の波状攻撃には凄まじいものがありました。自由に攻 撃できないが故に、地上物や飛来物から必要以上の弾幕の嵐が降り注いできています。
「こんな攻撃、果たしてクリアできるのだろうか?」
こう感じていたのは私一人ではありませんでした。絶望感に襲われるほど凄まじい攻撃を 見てしまったわけですが、それと同時に、これ程謎めいていて今すぐにプレイしたいとい う衝動に駆られるゲームは今まで無かったと言えるほど、魅惑的なゲームに感じました。
そして、早速リセットスイッチを入れ直して、この日からゼビウスとの格闘が始まりまし た。
ディグダグとは全く異なるジャンルのゲーム。それまでやったことのあるギャラクシアン 等とも異なるシューティングゲーム。まだ撃ち分けシューティングの基礎が無かった私は、 それほど上達速度は早くなかったのです。
ゼビウスの魅力は幾つもありますが、まず最も不思議だったのはソルというキャラでしょ う。ある意味隠れキャラ的な存在で語られていたソルは、特定の場所に地上攻撃用のブラ スターを撃ち落とすことによって生えてくる謎の物体でした。出すだけでも得点出来、さ らに攻撃して得点出来る搭状の謎の建造物。点数が大きいことから必然と無視できないソ ル、ソル探しはゼビウス初期における大きな楽しみの一つとなりました。またごく最初の 頃などは、ソル上が通れるかどうかなどという会話すら飛び交いました。
しかし、真の隠れキャラクターは、違うところにありました。ある場所に来ると、何処か で見たような旗が出現します。しかも出たり出なかったり。中間色をベースにしているゼ ビウスには似つかわしくない原色のスペシャル・フラッグ。それは同社のラリーXシリーズ に出てくる旗のようでした。
とりあえず危害は無さそうなので、上を通過してみると、ストックが1機増えてるような 気がします。出すと1000点入りますが、実はこの旗はエクステンドでした。(設定により エクステンドではなくボーナス点10,000点にしかならないこともあります) Every設定な のに、さらに自機を増やす手段がある。しかし、如何せん出す方法がよく分からない。デ ザイン的にもゼビウスとは明らかに違和感のある配置。まさに謎そのものでした。
実は、ゼビウスが発売された後に、BASICマガジンというマイコン雑誌にSUPER SOFT MAGAZINE という付録が付くようになるのですが、これが日本全国にも及ぶゼビウスブームに拍車を かけることになります。
ソルの位置やスペシャルフラッグの謎から、マッピング、キャラクター設定、さらには背 景となる物語の存在。そして、全国のゼビウスプレイヤーの動向を知ることになるチャレ ンジ・ハイスコアの開始。
ゼビウスは、連続型のスクロールゲームではありますが、実際はマップとしては16エリア までが設定され、以後(地形が)ループするということも明らかになっていきます。ディ グダグの時代は、100万点行くと0に戻るのが常識でした。ゼビウスはどうか?
何と7桁目があるのでした。ゼビウスは1000万点行かないと0に戻ってくれないのか? よく考えてみるとスクロール画面であるが故の疑問も湧いてきます。固定画面のゲーム では面数がカウントされ8ビット機におけるマジックナンバー256面まで行くと何かが起こ る。しかし、ゼビウスには面数という概念自体が無い。
そうこうしているうちに、例のチャレンジ・ハイスコアでは、既に限界点が叩き出されて いました。9,999,999点。事実上の1000万点が出ていたのです。それも、1人ではなく何人 もが名を連ねていました。
"カウンターストップ"。聞き慣れない言葉に新たな時代が幕を開けたような気 がしました。ゲーム性然り、そして6時間以上にも及ぶ長時間プレイの末のカウンタース トップという現象。そして、それは単に数字が止まると言うだけではなく、無限増えとい う怪現象を伴ってゲームセンター中に究極のプレイが完結したことをファンファーレのよ うに鳴り響かせる派手なパフォーマンスであることを後に自ら知ることになります。
Every設定であるので、16エリアに行くまでに十分な自機のストックを貯めておき、難所の 15、16エリアでは先制攻撃で極力弾を撃たれない様にした敵を破壊した上で弾避けを試み ます。ここでもディグダグ同様パターン化がものを言いました。最終的には先読み的な弾 避けの技量が試されますが、地上物に関しては固定のためパターン化が出来るわけです。
ゼビウスでは、今日のシューティングゲームに比べれば、敵から発射される弾の速さは遅 いのですが、自機のスピードも同様に遅いので、弾避け自体は、反射神経任せの避けでは なく、弾の軌跡を先読みを意識した弾避けが基本です。
16エリアをある頻度でクリアすることができるようになり、自己ベストも7桁を記録する ようになった頃、1000万点プレイを試みるべく私は別のゲームセンターに足を運びました。 これにはある事情が絡んでいます。実は、イエナガにあったゼビウスは、難易度こそ標準 のAランクでしたが、エクステンドが標準の2,6万点Everyではなく、3,8万点Everyだったの です。
入学当時は無かった、ラスベガスというイエナガからも近いこのゲームセンターには標準 エクステンドのゼビウスが入荷されていました。この時期の一番人気でしたからこのゲー ムの無かったゲームセンターを探す方が難しかったくらいです。
しかし、標準設定でないレベルで練習していたことが逆に功を奏しました。難易度のより 緩やかなエクステンドならば、思ったより自機の減りが遅いはずだからです。そして、初 挑戦のこのラスベガスというゲームセンターでついにカウンターストップを経験すること になります。
真夏、真昼のゲームセンター、冷房が必要以上に効いた場所で、缶ジュースを飲みながら 激闘を繰り返すこと約7時間。
戦いはいよいよクライマックスを迎えました。話題の無限増えは、1000万点到達前に始ま りました。そのときは分からなかったのですが、後から無限増えは最終エクステンドの点 数の直後に始まるころが判明するので、このときは996万点から得点が入る度に1機エクス テンドするという無限増えが始まっていたのです。
ガラスを撃つとそれだけで数十機ソルバルウが増え、ソルを出して1機、撃ってまた1機、 とにかく飛来物でも地上物でもストックが増えていくので、五月蠅いくらいにエクステン ド音が連続して鳴り響くので、嫌でも目立ってしまいます。
また、従来のギャラガなどでノーミスでどんどんストックを増やしていっても数個しか表 示されずに後は隠れてしまうのに対して、ゼビウスでは大きさにして8ドット四方くらい の小さくデザインされたストック表示キャラが画面横一列一杯に数十機並ぶので、そうい う見た目のインパクトもありました。
このストックは横に三十機弱並べることが出来ますが、実際は255機までストックが可能で す。無限増えを知ってから、さらにプレイを続行していると時々、自機がやられた後にス トックが突然数機に減ってしまうことに気付きますが、自機のカウントが256で0に戻って しまうのではないかとコンピュータに明るい仲間の一人が指摘したので、実際のプレイで これを確認し、改めて256という数字のマジックに興味を持ちました。
無限増えが始まってから数分間、感動に浸りながら初めてのカンストに向けてプレイし続 けました。カウンターがハイスコア、1P共々9で埋め尽くされたあと、ゲームを強制的 に終わらせるべく自機を何十機も自滅させ、ゲームオーバーの後ハイスコアネームを入れ、 おもむろに席を立ちました。
内心は、感動で包まれていた私でしたが、冷房と飲み物のせいでしょうか、終盤は腹痛と も闘いながらゲームしていたという状態だったので、余韻もほどほどにゲームセンターを 後にした記憶が今でも鮮明に残っています。
この後非標準設定のイエナガでも1000万点を記録し、仲間にもお披露目することになりま すが、6時間を超えるプレイ故に、ギャラリーが増えては減り、また新たなギャラリーが 来ては去っていきという具合でゲームが進んでいくことになります。そして、900万点を越 える頃になるとギャラリーはカウンターストップまで張り付き終幕を見届けるわけです。
先ほど無限増えの法則性のようなことを書きましたが、イエナガの8万Everyの台で1000万 点を出してから、その法則が正しいことを自ら証明できたことを付け加えておきます。
難易度のことですが、ゼビウスにはエクステンドの設定以外にも、本来のゲームの難易度 設定のディップスイッチも内蔵されていて、ランクがAからDまで存在します。標準はA ですが、プレイしてみてなにか難しいような気がする、敵のパターン展開がちょっと早い と感じたらそれはBランク以上に設定してあると思って良いでしょう。しかし、16エリア をコンスタントにクリアできる腕があるならばこの難易度設定はさほど気になりません。 私自身も、Aランク以外でのカンストも達成しています。
ゼビウスに関しては、初回のラスベガス、本拠地のイエナガ、地元の神宮前キャラットハ ウス、社会人になってからの富山のゲームセンターと数カ所で、数十回のカウンタースト ップ・プレイをしてきましたが、それほど魅力があったゲームです。チャレンジ・ハイス コアのエントリー店でもあり、ナムコ直営の宮崎市にある神宮前キャロットハウスでは、 他人事のように見ていた、SUPER SOFT MAGAZINE に自分の名前を載せることもでき、嬉し かったのを覚えています。
ゼビウスは、情報が交錯し、謎が謎を呼び、極められて時間が経過してもまだ何かがある のではないかと疑われ続けた希有なゲームでした。今ではポケット・モンスターで知られ るゲームフリーク社長の田尻智氏もこの渦中にあったプレイヤーの一人でした。
その周辺も含め、ROM中のキャラクター、バグ現象、噂の真相、この辺はパート2の「スー パーゼビウス編」で合わせて書くことにしましょう。
ゼビウスは、アーケードゲームの歴史を塗り替えたビッグタイトルでしたが、自分のアー ケード史の中でも間違いなくBEST10に入る名作中の名作の一つです。私自身のプレイ内容 はともかく、1000万点というディグダグで為し得なかったある意味究極のスコアを初めて 自分の目で見ることが出来たゲームというのも重要な出来事でした。
2002.04.24(ed.4)
2002.03.26(ed.1)