1980年代は、ナムコクラシックの黄金期にあたるため、どうしてもナムコブランドが多く なってしまい、いきなりナムコ作品三連発となったこの連載ですが、4回目の今回初めて ナムコ以外の作品、Mr.Do!(Mr.Do!/universal 1982)を取り上げることにします。
時系列で最初から読んで下さっている方の中には覚えていらっしゃる方もあるかも知れま せんが、第1話の最後の下りでナムコのディグダグが影響を与えた作品として私はこの作 品の名前を挙げました。
実際2つのゲームを遊んだ事のあるプレイヤーでよく似ているゲームだと当時思った方も 多いのではないでしょうか。私もその例外ではなく、ディグダグの後にこのゲームを知っ たのでディグダグの二番煎じといった印象で見ていたことを覚えています。
しかし、このことが意外にも間違いでは無く、必然であったことが後になって分かるので す。
ユニバーサルというメーカーは、今ではアーケードゲームメーカーではなく違う方面を通 して知っている人も居ると思いますが、このゲームやレディ・バグなどの隠れたヒット作 を放っていたメーカーでした。このゲームはそのレディ・バグ同様アンダーライセンスで タイトーにより市場に乗り、最初からナムコブランドほどの派手な歓迎はありませんでし たが、内在するゲーム性の高さにプレイヤーが気付き始めてから徐々に人気を広めていっ た隠れたベストセラーといった感じのゲームでした。
Mr.Do!は、まさにディグダグをアレンジしたようなゲームで、地中を掘り歩くというシ チュエーションは同じ、岩の代わりにりんごが配置されていると言った画面構成で、また センターターゲットも存在しました。
基本的な部分でディグダグと決定的に違うのは、これにドットイート型の要素を組み入れ てあったことでした。画面には1ブロック2×4=8個のサクランボが数カ所に配置され てあって、敵モンスターを全滅させるだけでなく、このサクランボを全て食い尽くすこと でもその面をクリアとすることが出来たのです。このサクランボは、連続で食べると8個 目で若干のボーナス点が入ります。また連続で食べているとSEがドレミファソラシドと音 階を奏でます。
主人公のピエロに対して敵モンスターは赤いデザインのよく分からない生き物のようでし た。ピエロは、ボールを武器として持っており、ボタンを押すことでこれを投げつけるこ とが出来ます。ボールは掘ってある道に沿って、ピエロの手に戻ってくるか、モンスター に当たるか、規定回数バウンド(256回)して自然消滅するまで、彷徨い続けます。ただし、 ボールは、画面スタート時を例外として、1回使うと戻ってくるまでに時間が掛かり、ち ょっとした無防備状態になるので、それを踏まえた上で慎重に使う必要があります。
敵モンスターは、ディグダグでは土中を目変化でワープしてきましたが、このゲームでは デザイン的も白く変化する所は似ていますが、自ら穴を掘って進んでくるのでした。つま り、主人公以外の動き以外でも道がどんどん開拓されていくのでかなり複雑になっていき ます。このことは、ボールという武器とも絡んで面白さの要因にも関与していきます。
ディグダグの岩と同じようにりんごでも敵を攻撃することが出来ます。ディグダグをプレ イした人ならこの辺は直感的に把握できたことでしょう。しかし、このゲームのりんごは、 さらに使いやすく改良してあり、それがこのゲームをディグダグと似て非なるゲーム性の 深い二番煎じではない名作の域に押し上げていました。
ディグダグの岩は、その下を掘ると必ず壊れてしまいましたが、このゲームにフィーチャ ーされていたりんごは、1段だけなら割れずに下にずり落ちるという性質を持っていまし た。このためモンスターに追いつめられてやむなくりんごの下を掘ることになっても無駄 遣いすることが無かったり、意識的にりんごを下にずらしたり、その裏に回り込んだり出 来て、戦略性を上げる要素の一つになっていたのです。
さらに驚いたのは、このりんごは横方向からも動かすことが出来たと言うことです。ディ グダグでは動かないのが当たり前だったのが、自分の思いのままに動かすことが出来、単 に待ち伏せるだけでなく、モンスターに対してアグレッシブに攻撃できるアイテムにし昇 華されていたことは、驚きというよりある意味感動に近いものがありました。
Mr.Do!には、この他にも数多く優れた要素がフィーチャーされていました。
同社開発のオリジナリティの高いドットイート型ゲームにレディ・バグがありましたが、 このゲームで既に用いられていたのが EXTRA によるエクステンド方式でした。Mr.Do!も この方式を継承し、ナムコやコナミに見られたような得点によるエクステンド方式ではな く、EXTRAモンスターが登場してこの役目を担っています。EXTRAを揃えるとでも画面に入 り、そこではなんと鉄腕アトムがBGMとして流れます。既存の音楽を流用するのはこのゲー ムに限らず見られたことでした。
EXTRAモンスターは、赤い通常モンスター8匹が画面中央のホームから全て進撃し切ってか ら現れるセンターターゲットに飛び込むか、得点が5000点を刻む毎に画面上部から現れま す。
得点による出現の場合は、イン・プレイのままE・X・T・R・Aのいずれかの文字モンスター が単独で現れますが、センターターゲットの時は、これが護衛の青いモンスターを3匹引 き連れて出てきます。また、このとき通常の赤いモンスターとの対決は一旦フリーズされ、 これらのEXTRAモンスター達との直接対決となります。
センターターゲットに飛び込むと赤いモンスターは瞬時にその動きを止めるため、言い換 えるとセンターターゲット言うのは、赤いモンスターに追いつめられたときの一時避難的 なアイテムであったとも言えるのです。もちろん、ディグダグ同様、重要な得点源でもあ りました。センターターゲットは、レモンスカッシュの繰り返しまで上がっていきます。
EXTRAモンスターは、ボールを当てるとりんごになり落ちてきます。また、EXTRAモンスタ ーは既存のりんごを食べていくという特殊能力も持っているので、不用意に連れ回すと厄 介です。護衛から順に殺していくと、文字モンスターは最後に帰っていってしまうので、 考えてやっつけなければなりません。
EXTRAモンスターは、画面上部のEXTRAの表示がゲーム中一定のサイクルで常にローテーシ ョンしており、そのどこにフォーカスされているかで出てくる文字が決まるので、プレイ しながら調整することが出来ます。もちろん、これをうまくやるには赤いモンスターを誘 導するテクニックが必要になり、そうそう簡単ではありません。
Everyエクステンドではありませんが、上手くなってくると効率よくEXTRAを揃えることが 出来るようになり、2〜4面に1回ぐらいの割合でエクステンドしながらゲームを続ける ことが可能になります。
1面あたりの得点が約1万点〜2万点、さらにこれにセンターターゲットによる出現が加 わるので、通常1面で2〜3回の文字を引っぱり出すことが出来ます。実際には、既に取 った文字のモンスターが出てくることも増える(すぐ分かることですが、文字が揃えば揃 うほど残りの文字を出すのに調整が必要になります)ので、一筋縄にはいきません。
このゲームでは、単なる敵キャラクターとの対決に加え、ドットイートゲームの要素、さ らに能動的なエクステンド狙いと言った要素が組み合わさった複合的なゲームだったので す。
そして、それらがこのゲームを複数の面クリア条件を持ったゲームとして性格付けていま した。
前にも書いたとおりサクランボを食べ尽くすこと、赤いモンスターを8匹全滅させること の2通りのいずれでも面クリア出来ると書きましたが、これに加えてEXTRAモンスターを 揃えることでも面クリアとすることができました。要するに、赤いモンスターが幾ら残っ て居ようとも、最後のEXTRAモンスターを討ち取ることさえ出来ればその面はクリアできた のです。面クリアの方法が3通りあるというだけでも驚きですが、さらなる驚きが待って いました。
実はこのゲームには4番目のクリアの方法が仕組まれていたのです。
それがダイヤモンドという偶発生に任せたフィーチャーでした。りんごを割るとある一定 の割合でダイヤモンドが出るように設定されてあり、そのダイヤモンドを取ることが出来 るとその面がクリアとなり、さらに1クレジットをプレゼントされるという破格のもので した。
ビデオゲームとは異なるジャンルのピンボールというゲーム機では、EXTRA BALLに加え、 SPECIALという1クレジットサービスがフィーチャーされているのは常識だったりしますが、 ビデオゲームで1クレジットサービスというのは、本当に驚きでした。ダイヤモンド自体 は滅多に出るものでなく、たまに出るとギャラリーが寄って来るくらい珍しいものであり ましたがそれでも破格であったといえましょう。ちなみに、ディップスイッチで、この出 現率が調整できたので、設定の甘い台では、思ったより出る回数が多かったというロケー ションもありました。
このダイヤモンド、その話題性だけでなく作り込みもしっかりしてありました。数パター ンのドットキャラを交互に表示していかにも輝いている感じを再現しており、また出現し た瞬間から音も鳴り出すのですが、この音がいかにも「キラキラ」を表現したらこうなる だろういう音を見事に再現していたのです。ダイヤモンドが出ると、そこを見ていなくて もすぐ分かり、それは当事者のプレイヤーだけでなく、周りのギャラリーをも引き寄せる 魅力を持っていたのでした。余談ですが、ある方法でこのダイヤモンドのドットパターン を方眼紙にメモし、友人宅に持ち帰ってシャープのマイコンX1で再現させたこともあり ました。
ここまで書いただけでも、Mr.Do!というゲームの持つ多様性は分かると思いますが、この ゲームの本当の凄さはもっと目立たないところにあります。
このゲームをやり込んでいくと、赤いモンスターが実にトリッキーな動きを見せ、ピエロ をやっつけようと巧みに攻撃を仕掛けてくるのに気付かされます。まさに意志を持ってい るかのような動きです。下に位置するピエロに向かってりんごを押してくるモンスター、 得点稼ぎをさせまいとする自殺する最後のモンスター、フェイトとも思えるモンスターの ストップモーション、実に多彩で目を見張ります。
おそらくゲームデザイナーの仕掛けたアルゴリズムの成せる技だと思いますが、実に個々 のモンスターが生き生きとしていて、単に1種類の赤いモンスターと戦っているだけなの にプレイヤーを全く飽きさせないのです。
ディグダグでは敵モンスターが1匹になると逃げてしまいましたが、このゲームでは逃げ ていきません。逃げる必要がないと言った方が良いでしょうか。
ディグダグでは、主人公が常時ポンプを使うことが出来、2匹以上なら怖いプーカ達も1 匹になってしまうと全く怖くないのですが、Mr.Do!では、飛び道具のボールという武器 の性質と機動性の高いモンスターということが相まって逃げる必要が無くなっています。
ボールは一旦手を放れてしまうと戻ってくるまで使えないし、破裂した後ではボールが復 活するまでに致命的とも言えるタイムラグが発生します。しかも、複雑な道筋で不用意に ボールを使うとモンスターに命中しないことも珍しくありませんでした。
ボールという武器は、飛び道具であるという部分で、近距離で威力を発揮したディグダグ のポンプとは明らかに違う種類の武器でした。複雑に堀尽くされた道筋を自由に飛び回る ボールがゲーム展開に想像以上の変化を与えていたのでした。
ゲームの本筋から離れた遊びにバグによる怪現象のチェックやゼビウス以来流行となった 隠れキャラクターなどがあります。このゲームにも大小様々な珍現象やまた遊び心のある 隠しフィーチャーがありました。
サクランボは、上下左右から半分だけ食べるようにすると、違うドットパターンを表すよ うになります。何だろうと意味もなく遊び心でこれを四方から行うと、そこに残されるキ ャラクターはバラの蕾の様に見えるのでした。意味はありませんが、プログラマーの遊び 心です。
Mr.Do!は、かなりやりこんだゲームだったのでいくつもの珍現象を自分で目にするこ とが出来ましたが、たとえば、通常ボールがバウンドして飛んでいくのですが、これが何 かの拍子にずれて画面上部を横方向に小刻みにバウンドしながら行ったり来たりといった ことや、りんごに挟まったようにボールが1カ所に留まってしまうようなこと、またりん ごとEXTRAモンスターの位置関係が微妙にずれているとき、EXTRAモンスターがりんごを食 べることが出来ずに、りんごを食べようとしているのに食べることが出来なくて、アルゴ リズムがループするといった現象、赤いモンスターがりんごに挟まってしまい永久パター ンにすることが出来たりと、細かいものはいくつもありました。
最も派手な怪現象は、バグを利用した荒技でした。インカムにも影響するこの現象はあま りにも有名になってしまったので、その後基板自体が回収されてこの技が出来ないように されたゲーム性は全く同じの新バージョンが出るといったことにまで発展するのですが、 当時アミューズメントライフというゲーム雑誌に載ったこの技は次のようなものでした。
なるべく高い位置にあるりんごを利用し、通常は1面で行います。
順番はどちらからでも良いのですが、わざとピエロを最後の1人にし自滅させていき、ま た赤いモンスターも1匹になるまでやっつけておきます。そして、最後のモンスターを使 おうと決めておいたりんごの下から真っ直ぐに誘き寄せます。
Mr.Do!のユーザーフレンドリーな仕様に、ピエロが死んだ後でもクリアの条件が満たされ ればタイムラグに限らずピエロがミスしたことにならないというものがあります。これを 利用して、最後のモンスターとピエロが同時にりんごに潰されるようにしてその面をクリ アするようにします。
ピエロも潰されますが、モンスターも全滅させた条件を満たしているので、通常ならばそ の面はクリアされることになります。
しかし、ここで怪現象が起こります。
ピエロは意識的に最後の一人にしてあるので、ストック表示は本来何もないはずですが、 なんと、このプレイの後、ピエロのストック表示がこのゲーム最大の6人並んでしまうの です。そして、実際は、この6人のピエロは、全員表示されていないだけで実は255人居 たのでした。そう、マジックナンバー256の怪です。
実は、Mr.Do!では、通常のプレイ中ストックがゼロの時にエクステンドすると、一旦ス トック表示が6人になって、そこにピエロが追加される画面パターンの後、6人が消えて ストック表示が正常の1人になるといったゲームとは実も害もないミニ珍現象が時々見ら れました。もしかすると、その6人が255人だったわけで、実は255人増えの荒技の兆しを それまでに何回も見ていたのかもしれません。
この荒技は、実はピエロは死んでいないのに、死んだと誤って判定された為、(ストック) 0−1=255という数式に基づくバグ技だと解釈することが出来ます。8ビットの世界では 256=0だからです。
この技で増えたピエロが実際に255人であるかどうかは、この技が成功した後、死なずに エクステンドするとストックが0になってしまうことから簡単に証明できました。
Mr.Do!では、スコア記録が、得点、面数に加えて、時間も表示されて残るのですが、イエ ナガでも、あるとき、この3要素が奇妙なバランスの記録を目にすることがあったのを思 い出します。実は、この時身内以外でバグ技を誰かが試していたのだと推測できます。
通常のプレイでも、常時数十万点出すことが出来、かなり上達してはいたのですが、私自 身もこの技を使ってみることにしました。それは、ある目的のためでした。
その目的とは、「256面までプレイしたらどうなるのか?」。
ギャラガで、256面の不思議を目の当たりにした私は、この技を使ってそれを確かめてみる ことにしました。そして、Mr.Do!では、ギャラガに無かった完全ループを見ることになり ました。256面すなわち0面がしっかり存在し、それをクリアすると、全くの1面に戻って しまうのでした。赤いモンスターの動きからゲームスタート時の1面と同じ状態であるこ とは明らかでした。スコアに関しては、ギャラガやディグダグと同様です。
その後、ノーマルプレイでも調子が良ければ100万点を出せるようになり、まだ紹介してい なプーヤンに次いで自分としての4つ目の100万点ゲーム(当時、私の周りでは100万点を 越えるというのが1つの勲章であった)になるのですが、その後もこのゲームはプレイし 続けました。スコアを別にして、とにかく普通に飽きない面白さなのです。
ある意味、ゲームは赤いモンスターとの勝負と言った感覚がありました。ゲームセンター に行っては、「今日もいっちょモンスターと勝負したるか!」という感じです。時間が経 つと、赤いモンスターが良きライバルというような愛着を持つまでに好きになりました。
Mr.Do!は、ディグダグというベースになった作品がありながら、それを越える豊かなゲー ム性を備えた優れたゲームでした。ディグダグを意識して作ったとゲームデザイナー自ら 語っていたことを思い出しますが、確かにこのゲームを遊んでいて、こんな面白いゲーム を作った人はどんな人だろう、と興味を持ったのも事実でした。
多様性とアルゴリズムでプレイヤーを飽きさせない固定画面キャラクターアクションの傑 作、私の生涯BEST1アーケード・クラシックと言える隠れた名作、それが この Mr.Do!で した。
2002.04.24(ed.3)
2002.03.28(ed.1)