ファンタジーの畑にはバグも花盛り
(第9面)−リブルラブル/ナムコ


   私が初めて買ったパソコンは、友人宅で最初に触れた機種がX1であったことからか、ゲー ムマニアに愛されたシャープの名機X68000シリーズでした。

   このモトローラ製の16ビットCPUを示す、68000という数字を初めて目にしたのは、ナムコ の新作リブルラブル(Libble Rabble/namco 1983)が発売されたときでした。

   ゼビウス、マッピー以降、ナムコの新作はその内容に関わらずゲームファンの待ちこがれ る存在になっていましたが、リブルラブルもそういう期待の集中する中発売されました。 SUPER SOFT MAGAZINE で新作情報を見てから間もなく行きつけのイエナガにも入荷され、 ゲームを見ると緑をベースにしてデザインされているというのがプレイする前の印象で、 コンパネから垂直方向に突き出たツインレバーも何か面白そうだという印象を与えました。

   ツインレバーと言えばかつてクレイジークライマーという名作がニチブツにありました。 このゲームもきっと面白いに違いない、漠然とそう思ったのでした。情報が先行するメデ ィアでは、ハードウェアが凄い様なことも謳っていました。それまでは、8ビットを基本 にしていたアーケードゲームでしたが、このゲームは68000という16ビットを使っていると いう具合です。

   とりあえず、これはやってみるしかないということでコインを入れてみます。この頃は、 常連同士交流も深まっていましたので、誰かがプレイしているとその周りで興味津々と数 人が取り囲みチェックを入れていました。そこで、気付いたことをどんどん言い合いなが ら、交代で遊んでいくわけです。

   リブルラブルは、画面が緑色のお花畑みたいなイメージで、杭のようなものが画面中に打 ってあり、これを利用して、糸で繋がったリブル・ラブルを操作し土地を囲んでいきます。 ファンタジーの国には、敵となるホブリン、そして敵ではないキノコのような妖精マシュ リンが住んでいます。また、やがて自然に種から成長して花を咲かせ、実を結ぶ植物が育 って行きます。

   取り敢えずの目的は、画面上のマシュリンを全て捕まえて面をクリアすることです。糸で 結ばれたリブルとラブルを操作して囲むことが出来ると捕まえることになります。

   ホブリン等の敵に触れるとミスとなりますが、他でも、エネルギー制が敷いてあり、画面 の外側にそのゲージになる部分があります。プレイ中はこのゲージが減っていきゼロにな ると1ミスとなります。ボーナスステージでも、これは継続されますが、そこではミスに は成らず単なるボーナスステージの終了を意味します。また、余分に残ったエネルギーは ボーナス点換算されます。

   ここで重要な役割を果たすのが植物の存在です。時間の流れに従って勝手に育って、成長 を繰り返すこの植物は実は命の源、エネルギーの元なのです。実の状態を囲むと一番効果 が大きく、花、双葉、種とその段階によって段々と効果が小さくなっていくという風に設 定が工夫されていました。エネルギーには上限があり、一気に囲んでしまうともったいな いため、植物を上手に育てながら、一部を刈り取ってタイムを維持するといったゲーム展 開になります。

   ホブリンは、通常勝手気ままに動き回っていますが、ある時間帯になるとこちらを狙って 動いてきます。同社の名作パックマンのモンスターと同じ様な感じでこの通常と怒った状 態を繰り返しますといえば分かりやすいでしょうか。

   敵は、ホブリンだけではありません。時間が経つと画面内外から様々なお邪魔キャラが登 場します。

   シェアーは、直線上の軌道を走る鋏状のキャラクターでリブルとラブルを結んでる糸を切 っていきます。同時に花になった植物を枯らしていく効果も持っています。チェンジャー は、画面上をなめる様にジグザグに動いていくキャラクターでリブルとラブルの位置を交 換していくキャラクターです。どちらも、リブルラブルのトポロジー的な位置関係に左右 するためプレイヤーを混乱させパニックにさせる非常に嫌なキャラクターです。チェンジ ャーは直接触れるとミスになります。

   キラーは、一定軌道を斜めに動き回るキャラクターですが、糸に触れるとエネルギーを吸 い取りタイムがどんどん減っていきます。また直接触れるとミスにもなるという強敵です。 特に、一旦糸に張り付くとこれを振り切るまでは離れず、どんどんタイムゲージが減って いく様は見ていても冷や冷やします。上の2つとは違った意味でパニックを引き起こす要 因を作ります。

   さらに、宝箱の守り神とも言うべき巨大キャラ、ガーゴルがいます。普段は居ませんが、 宝箱を出そうとしているときタイミングが悪いと出てきます。ドットパターンが大きい上 に動きが速く、接触しやすいので要注意です。しかも植物に悪影響をもたらす悪者で、種 を食べたりします。

   このリブルラブル、細部にもこだわっています。ラウンドは、春夏秋冬の4パターンを基 本とし、春と夏の面が杭の数が最も多くて縦横に密に、秋の面が斜めにやや少なく、冬の 面が独特のパターンでさらに少ない杭の配置になっていました。杭の数によってその難易 度が変わり、もちろんその数が少ないほど難易度が上がります。冬の面では、杭の数がた った1本しかない面すら後半に現れます。

   また、畑の色がバシシすなわちリブルとラブルで囲むことですが、これによって色が緑か ら茶色へ変わっていき土地が荒れていくイメージを提供します。これにより、荒れた土地 では植物が育ちにくくなると行った設定もされていたようです。プレイヤー側の立場から は宝箱探しの重要な情報源という意味合いも持ちます。

   このゲームでは、ボーナスステージが従来のラウンド制から変わって変則的な入れ方をし てありました。そして、この奇跡と呼ばれるボーナスステージを何回起こすかで、そのゲ ームを評価するといった変わった遊び方の提示がされていました。すなわち、点数は二の 次というわけです。

   これは、ゼビウス以降ハイスコア争いが加熱して、永久パターンによる点数稼ぎやそれに 準ずる、やや無意味な争いに対する一種のアンチテーゼを意味していました。また、エク ステンドも工夫されており、最初から点数が伸びるに従って徐々にそのエクステンド幅が 広がるように標準設定されていました。これは、後にパックランドに継承されていきます。

   ボーナスステージに入るには、奇跡を起こす必要がありますが、これは畑のどこかに隠さ れている宝箱を探しこれをまずバシシする必要があります。

   宝箱は、闇雲に探しても見つかることは見つかりますが、ある方法があります。

   春夏の面で言うところの杭の間の土地およそ4マス以下で囲んだとき、その中に宝箱が在 ればその土地が光るというフィーチャーです。これを利用するために、なるべくこの大き さで在処を絞り込んでいってから、宝箱を出すようにします。この時、囲んだ土地の色が 数段階変わっていくということを情報として探すわけです。

   宝箱は、まずその在りかを杭の間の土地およそ2マス以下で囲んだとき、始めて姿を現し ます。また、妖精である6匹のトプカプが同時に現れます。宝物の中身は様々で、点数に なるもの、ある種の特殊効果を起こす物といろいろあり、これを発揮させるためには、現 れた宝物を再度バシシする必要がありました。

   トプカプと言われる妖精は、6匹が全く違った方向に散らばっていきます。この6匹を全 て揃えると初めて奇跡が始まります。1度捉えた色のトプカプは、ストックされるので2 度目以降は、まだ捕まえていないトプカプだけ捕まえればよいのですが、もちろん1回で 1奇跡を起こせればこれに越したことはありません。初級者から脱出するまず最初の一歩 は、宝箱の一が判明しこれを出しに行くときに、トプカプをどういう風に追いかけるかを 想定したリブル・ラブルのフォーメーションを考えておくことです。

   トプカプが全て揃うと、その瞬間に民族音楽的なBGMに変わり、また画面が一色に染まり始 めます。

   その後画面は、残っているエネルギーゲージの残量内に自由に宝箱を探す事の出来るボー ナスステージに入ります。ここにある宝箱は6個あり、中身はボーナス点に換算される宝 となります。安い物から高い物まで数種ありますが、最も高い物は金の冠で10万点も稼ぐ ことが出来ます。ですから、ここでは勘を働かせる必要がありました。

   リブルラブルでよく語り草になっているのが、ナムコから配布されていたバシシマーカー です。

   ナムコというメーカーは、情報誌のNGや豆本など、ユーザーに対して時々面白いアイテム を提供していましたが、このゲームでは、ボーナスステージで宝箱をマーキングするため のグッズを配布していました。これはどういうことかというと、ボーナスステージでは、 その始まりに宝箱の在りかがまず数秒の点滅によって示されるのです。これを記憶して宝 箱を取りに行くので、実際よく2人でやっていたりするとお金などを出してマーカー代わ りにしていたりしたのでした。このマーカーをメーカーが配布していたのでした。ちなみ に紙製のオリジナルのバシシマーカーには、トプカプがデザインされています。

   奇跡には、FLOWER、JEWELS、RAINBOW、BRIDALなど、その回数によってテーマが与えられて そのイメージ画面が展開されます。また、BGMも変わりますが、BRIDALに関してだけは、ク ラシックの結婚行進曲をそのまま使っているといった変化も加えられていました。

   さらに、ハイスコアラーのネームが出てくる奇跡やある確率でランダムに出現するFANTASY といった奇跡もあり、なるべく単調さを感じさせないように工夫されていました。

   リブルラブルのハイスコア画面は、奇跡の回数が表示されますが、私自身はせいぜい20回 程度しか起こすことが出来ませんでしたが、全国レベルのプレイヤーは、50回、60回と起 こせたようです。

   コンピュータを使用して出来ているテレビゲームでは、ハードウェアの能力を上回るキャ ラクター数や処理が発生すると処理落ちなる現象が発生することがよくあります。これに より画面上のキャラクターの動きが遅くなるなど、ゲーム展開がスローになったりするわ けです。

   聞く所によると、このゲームでよりたくさんの奇跡を起こすためには、この処理落ちを利 用するのが上級者における一つのテクニックであったといいます。

   普通は、いつでも安全にクリアできるよう出来るだけマシュリンをバシシしておくのが得 策と考えるところを、わざとバシシせずに画面上に残しておき、宝箱探しに専念します。 そして、宝箱を出現させ、トプカプも加えキャラクター数がMAXに達したときに処理落ちが しやすいという現象を利用して、スローの状態で的確にトプカプを捕まえようというもの でした。このとき、安全にこれを遂行するため、エネルギーゲージがあるレベル以上にな ったら無敵状態になるというフィーチャーを利用するため、直前にタイミングを見計らっ て実や花をバシシしておきます。

   奇跡数3桁ともいった、驚異的なプレイは、この技を利用したものだったようですが、初 心者にはまず不必要なバシシをしないように宝箱の位置を探すこと自体が難しいので、結 局は、最低限のスキルがあってのテクニックと言うことになります。

   リブルラブルは新しいハードウェアといった部分もあって、バグが多かったゲームとして やや不名誉な呼ばれ方もされたことを記憶している人も多いかもしれません。

   一番迷惑だったバグは、勝手に奇跡状態ともいった現象で、違った言い方をすれば暴走で す。ある瞬間突然レバー操作が不能になり画面中が水色に覆い尽くされていく。プレイヤ ーとしては、とりあえずお金を返してもらって再ゲームといったこの暴走は、頻度もそれ なりに高く経験している人は多いと思います。

   その他にも細かいものでは、奇跡が起こった後、残っていたマシュリンがボーナスステー ジにも残って表示されるとかいうものもあります。デジカメも無かった時代、ポラロイド でこの画面を写真に撮ったこともありました。他にも画面中糸だらけといった現象など、 実に不可解なバグが多かったのです。

   バグが少なければ、もっとこの作品に対する評価も違っていたかも知れません。ただ、そ れを除外しても、操作性共々ゲーム内容の個性が強かったせいか、一般には思ったほど受 けが良くなかったかも知れません。イエナガでも、同時代の他のナムコ作品と比べると、 割と早く引き上げられていったような感があり、我々も納得行くまでプレイしきれなかっ たゲームでした。

   先のBRIDALの奇跡でもBGMの話が出てきましたが、このゲームのBGMもドルアーガの塔やマ ッピー等、当時の他のナムコブランド同様秀逸であり、このゲームの雰囲気を作り上げる 重要な要素となっていました。その後レコード化、CD化もされるような時代にもなってい きますが、好きなゲームのSEやBGMを録音して家で聞きたいというのは、一部アーケードゲ ーム好きの共通の夢でした。特に、ナムコの作品は、このリブルラブルも含めその対象と されることが多かったような気がします。

   バグこそ多かったものの、秀逸なBGM、オリジナリティの高さと、ナムコブランドの特色を 持っていたこの作品は、コンシューマ機が普及していくときも移植希望作品として常に高 い支持を得、PCB基板市場でも高値を崩さないなど、特にマニアには根強い人気がある作品 であり、今でも語り継がれているツインレバー系ゲームの傑作です。

  
2002.04.24(ed.2)
2002.04.07(ed.1)


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