アーケードゲーム史に歴史を刻んだナムコのゼビウス。現在のスピード感溢れるシューテ ィング、弾幕が埋め尽くすシューティング、コンボ等のフィーチャーが熱いシューティン グとは、また違った趣のゲームですが、ついこの間およそ15年ぶりのカンストをプレイし てきました。勘が戻るまで数ゲームかかりましたがリハビリの途中、997万点でかの有名な バグにも見舞われるなど短い間でしたが堪能しました。
3週間のお勤めを終えもう無くなってしまいましたが、ふと思えばこのゼビウス発見が今 回の連載に至るきっかけを作ったようなもので、ここのところゲームセンター離れしてい た私をまた引き寄せることにも繋がっています。そういえば、同じナムコではパニクルパ ネクルという面白そうな新作も出ていますね。
さて、前置きが長くなりましたが、今回は、第2話の続きという設定でお送りしようと思 います。なんせゼビウスに関しては書くことが多すぎます。前回書ききれなかった点を中 心に追加という形で書いていこうと思います。また、形式上取り上げるゲームとしてはス ーパーゼビウス(Super Xevious/namco 1984)ということにしてあります。
ゼビウスでは、まことしやかな噂が数多く流れました。ゲームというのは、時に怪現象と 呼ばれる本来のゲーム仕様とは異なる画面や展開が見られ、珍しがられてそれを見た人か ら口コミで広がったりすることがありました。プログラムミス的なことから発生するとい った意味で単純に「バグ」といった言葉で一括して呼ばれることもあります。
ゼビウスに関しても、前回書いたカンスト時の無限増えを始め、この状態でゲームを続け るとよく発生する、森の中に出てくる地上物、エクステンド毎にずれていく地上物、操作 不能になるバグなど怪現象、驚異現象が幾つか在りました。出るはずのないところに地上 物のキャラクターが表示されるといった現象からか、ゼビウスが流行っていた時期には本 来は起こらない怪現象が幾つか語り伝えられました。
最も大きな噂が、ゼビウスの究極についての噂でした。これは、ボザ・ログラムという砲 台が十字に繋がった地上物をある順番で撃っていくとその後ゲーム展開が通常とは乖離し ていき、それまで見たこともないような壮絶なゼビウスの世界を見ることが出来るという ものでした。今では笑われてしまうかも知れませんが、実際半信半疑ながら試したのは事 実です。
結局、この噂は何の根拠もないデマだったことがなんとなく分かってくるのですが、実は この発信源がその後に明らかになります。このことは、かなり後になって結果的に発信源 となってしまったその人物の著書により明らかにされました。そして、その人物が田尻智 氏です。
「田尻智」という名前を聞いてピンと来る人は、2通りあるかと思いますが、工専生だっ た当時は一ゲームプレイヤーであり、またゲームフリークというアーケードゲーム同人誌 を発行していて我々ゲームファンにはよく知られている存在でした。今では、会社の代表 者であり、日本のみならず全世界を席巻したポケットモンスターの生みの親として広く知 られる存在になったその人です。
その著書に寄れば、この噂が全国に広がったのは、自分のせいではないかということでし た。正確に言えば、田尻氏のせいになってしまっていた、という方が良いでしょうか。当 時彼自身熱狂的ゼビウスファンであったのはいうまでもないことですが、その彼がゲーム センターで、ある人間からこのゼビウスの究極について尋ねられたというのです。田尻氏 はもちろんこのことを知らなかったのですが、ゼビウスファンとしては、その真偽を確か めたくなるのは至極当然でありましょう。
結局、田尻氏はこの後あちこちでこのゼビウスの究極について知らないかといろんな人に 聞いて回ったと言います。そのことが、結果的に究極のゼビウスの噂を形作ることになっ てしまいその発信源が田尻氏だたと捉えられることに繋がってしまったというのが真相の ようです。究極のゼビウスの噂は、ナムコに直接問い合わせが来たりしたことから開発者 の遠藤氏の耳にも入り、開発者自ら公に否定されたことこら、田尻氏は戦犯扱いとなり当 時の仲間からも一時期冷たくされたと語っていますが、その後遠藤氏の仲介により仲直り したというなにやら逸話めいたものになっています。
ゲームフリークの会員でありながら、そのようなことになっていたとは九州は佐賀という 地方にいた人間は知る由もなかったことですが、田尻氏が有名になった今だから言えるこ とですが面白い逸話だと思えます。彼の名誉のためにも再度言っておきますが、彼自身は 単なる好奇心の為その噂を確かめるべく行動に出たのであり、知ったかぶりをしてそのこ とを広めようとしたわけではなかったのです。
ゲームフリークと言えば、BASICマガジンを通して知り、私も入会しましたが、ゼビウスを 取り上げた「ゼビウス10000万点の解法」というコピー誌が出回っていました。うる星あん ず氏と中金直彦氏によるこの本は、その方面ではベストセラーになったといいます。ゲー ムフリークは、2人の手に余るようになった後委託を受けこれを販売していました。既に 攻略を終えていた私も資料的価値を見て手に入れましたが、そのときは既に在庫僅少だっ た覚えがあります。
これは、ゲームフリーク入会後に添えられていた田尻氏の手紙に最後の入手チャンス的な 書き込みがあったのでラッキーとばかり注文したわけですが、その手紙には彼のアーケー ドゲーマーとしてのプロフィールと共に、ゼビウスの隠れキャラクターなどのことも書か れていました。既に、サソリなども直筆でそこに描かれていたのは驚きで、あまりに濃い 内容に知り合いに教えたのを覚えています。
究極のゼビウスの他にも、こちらも悲しくなるほど有名なバキュラ256発破壊というものも あります。これは、8ビット仕様がもたらす幾つかのゲームにおける現象が元ネタになっ ているデマです。実際は、バキュラが下に降りてくるまでに物理的に256発ブラスターを撃 ち込むのが不可能であることと、そのようなプラグラム的根拠がないことであっさり否定 されます。
また、真偽のほどが灰色といった意味でも、最後の最後まで噂が尾を引いたのが、隠れキ ャラクターについての噂です。実際、ゼビウスは、ソルやスペシャルフラッグといったフ ィーチャーで我々を驚かせ楽しませてくれたのも事実であり、このことが他にも隠れキャ ラクターがあるといった噂が長く持続する根拠となってしまったようでした。
ゼビウスには、灰色のギャラクシアンを見たる、ファントムというキャラクターが出るら しい、あるいは隠れキャラの犬が画面を横切ったという、これまたまことしやかな噂も先 の2つと同じくらい有名になってしまい、ゼビウスの人気を持続させる要因にすらなって いたように思います。
結論からいうと、これらのゲームが仕様として通常のゲーム展開で出現することはありま せん。しかし、噂が全く100%否定出来なかった根拠も存在するから一層ややこしいものに なっています。ただし、一つだけ確実に言えるのは「犬」に関しては100%近いデマと言え ることくらいでしょうか。仮に何かそれらしき物が表示されたのだとしてもそれは偶然表 示されたドットパターンの見誤りか何かだと言えます。
実は、ゼビウスの内部には、ギャラクシアン言い換えればギャルボスと大小2種類のファ ントムに関するキャラクターパターンのデータが残っています。これは、開発時の名残で あって本来のゼビウスには組み込まれていません。従って、プログラムとしては出ないの ですがデータとしては残っているため、想像外のフローによりこれらのデータが誤って画 面上に表示されるといったことは100%否定できないのではないかというのが結論です。
その後、解析本やいろんな情報でこのことは明らかになっていきますが、その情報源に関 して私自身は自らの経験からこれに独自の見解を付け加えたいと思います。当時主流だっ たテーブル筐体には、筐体の下の方容易に手が届くところに電源のスイッチがありました。 よく行くゲームセンターでは、あるゲームでバグが起こりその後のプレイが不可能になっ てしまったときに、このスイッチでリセット出来るようになっていました。最初はこんな ことは知らないのですが、管理人さんがそうやってリセットするのを見て、行きつけのゲ ームセンターでは、常連は他のお客のためにもなると思い管理人に告げずにこのスイッチ を利用していました。
ゼビウスでも、操作不可能になる有名なバグのあとには、我々常連はすぐゲームが出来る ようにリセットしていました。しかし、このスイッチを素早く切り入りさせるとゼビウス の画面がリセット立ち上げされずに、内部のデータを映し出す(とは言っても仕様ではな くバグっぽい画面)ことがありました。そこには、キャラクターデータが並んだりしてい ましたが、その画面では内部に残っているギャルボスやファントムを見ることが出来たの です。
つまり、情報を知らなくてもギャルボスを知る手だてが現にあったのです。ということは、 これを偶然見つけた誰かがギャルボスがゲーム中に出てくるに違いない思ってこのことを 友人達に語っても不思議ではありません。ゼビウスは、超人気ゲームでしたからもしかす ると大発見と狂喜乱舞したかも知れませんね。ギャルボスの内部データは、それが飛行物 であることを証明するかのように、いくつものドットパターンが仕込んであったのですか ら。
一般には、これらのキャラクターは、あとで一部公開されたスーパーゼビウスで実際に見 ることが出来ました。私自身は、田尻氏からの手紙でいち早く存在だけは確認していたの ですが、ギャルボスやファントム意外にも初期開発バージョン「シャイアン」における自 機ヘリコプターや構造物としての橋、サソリ等も含めてスーパーゼビウスでお披露目され ていました。
実は、このゲームの存在を知る前には、このスーパーゼビウス自体が、まことしやかな噂 ですらありました。幾つかのデマが全く根拠のない噂だと知っていた当時、激難易度バー ジョンのゼビウスが存在するといったことは、地方の我々にとっては単なる噂の一つでし かなかったのです。しかし、ゲーム仲間のM.T君から知り合いが博多の近くでスーパーゼビ ウスを見つけたらしいということを聞かされるにいたって真実に転じます。
その知り合いの車で博多へ向かい、晴れてスーパーゼビウスとご対面となるわけですが、 連れてきてもらっている手前数回のプレイでこのゲームセンターを後にしました。通常の プレイで30万点ちょっと、確かに難しかったです。後で聞くと、このスーパーゼビウスは ゼビウスを海外でも発売する段階になって、国内で1000万点カンストの長時間プレイが確 認されているため、料金設定の低い海外ではインカムとの見合いも兼ねて難易度を上げて 発売するといったものがベースになっていたらしいことが分かりました。
国内では、噂になったスーパーゼビウスにこれまた噂になった隠れキャラクターを散りば めファン向けに一部公開されたものだと思います。その後、私は、久留米や地元の宮崎市 のナムコ直営店で再会したりしています。しかし、驚くのはその後チャレハイでスーパー ゼビウス1000万点が出てしまったことでした。通常のゼビウスのときも最初は驚きました が、今回はまた事情がちょっと違うような気がします。
スーパーゼビウスのカンストは、実際はジェミニ誘導という通常のゼビウスでも知られて いる技を利用したものであることが分かりちょっとホッとしたりもするのですが、この技 を使ったにしても相当のスキルがないと真似できないことは事実でした。
ジェミニ誘導というのは、大きな黒玉花火であるガルザカートが破裂した後に放つ弾に含 まれる4つの追尾弾をソルバルウの周りに引き連れて点を稼ぐという技です。普通に避け るとこの追尾弾はソルバルウを狙って向かってきた後画面外に消えていきますが、そのア ルゴリズムを利用するためガルザカートに向かっていくように自機を操作すると、一旦離 れた追尾弾が再度自機に向かって飛んできます。これを数回繰り返して消えないようにし これを引き連れながら撃つことで点を稼ぎます。この点数がバカにならないものなので、 これでEvery設定を満たすことが出来れば永久パターンになると言うわけです。(ガルザカ ート地帯は戻されるため)
スーパーゼビウスでは、通常のファンも飽きさせないようにソルの位置も変えられていま した。そういえば、その情報が私の頭の中にも残っているためか、今回初代ゼビウスのリ ハビリ時にも、ソルの位置を思い出そうとしているとき、勘違いしてスーパーゼビウスの 位置を確かめてしまうなどといったこともありました。
ちなみに、通常のゼビウスでも点稼ぎ程度に行うにしてもエクステンド幅が大きいので永 久パターンにはなりません。スーパーゼビウスでは、エクステンド幅がその難しさからか 小さくなっていました。
ゼビウスは、本当にネタの尽きないというか、現在のゲームと比較してそのシンプルさか らは推し量ることの出来ないほどいろんな噂の飛び交ったゲームでしたが、そういう噂や ゲーム以外の媒体での取り扱いにより、芸能人、文化人を巻き込み、部分的には社会現象 に近い効果をもたらしたゲームでした。
スーパーゼビウスをプレイ後、各の噂についても結論が出、スコアもカンストから残機潰 しによるタイムアタックに世の中がシフトしていった頃から、ゼビウスも最前線のゲーム からロングセラーとして片隅に置かれる存在になっていきました。
またゲームフリークからは、委託された「1000万点の解法」に続いてゼビウスの究極解析 本が発行されました。これでは、詳細なキャラクターデータや隠れキャラクターの真相や 敵の攻撃パターンなどが明らかにされました。我々カンストプレイヤーが漠然と掴んでい た敵の攻撃の展開の仕方もこれにより100%解明されました。
レーダーを撃つと攻撃が易しくなるという、仕様にも基づきながら噂っぽかった話も、こ れにより明らかになりました。実際は、易しくなるというより、攻撃パターンが設定され た系列上で2パターン前に戻るというものでした。易しいかどうかは、そのプレイヤーの 依存するものだからレーダーを破壊しても易しくなったかどうかは分からなかったわけで す。
しかし、当時は意識しませんでしたが、確かにレーダーを撃つか撃たないかにより、空中 敵のパターンを多少はコントロールする事も可能かもしれません。ゼビウスはやはり奥が 深いです。
ゼビウスに関しては、カンスト後、1人2プレイ同時カンストが出来るかといったバカな 試みを1回した後、私との関わりは一時終わりを告げます。結果的に400万点×2の頃にバ グに見舞われ断念しました。蛇足ですが、このプレイは、当時50円仕様に変わるまでの移 行措置として100円2プレイになっていたときに何となく思いついたものでした。
今となっては、スーパーゼビウスを通常プレイでどこまで行けるか、また試してみたい気 もします。普通のゲームではないので、基板としても現存するのかどうか分かりませんが、 もしあるなら基板を購入しておきたい一品ですね。スーパーゼビウスは、ゼビウスの続編 というわけではありませんでしたが、90年代に入ってゼビウス3D/Gという3Dビューのゼビ ウスが発売されています。ソルやアンドア・ジェネシスといったお馴染みのキャラクター も再現されており、懐かしい感じがしましたがやり込むまでには至りませんでした。
初代ゼビウスは、あまりにも偉大で、それを越えるゼビウスといったものは作ろうとしな い方がいいのかも知れません。
2002.05.09(ed.1)