インドの切り札ゲーム


   トランプの起源を東洋に求める人がいます。トランプの起源説でもっとも古いのはトランプ がジプシーの手によって、東洋から西洋にもちこまれた、といういわゆる東洋起源説である、 とハーグレイブは書いています。たしかにインドのカード・ゲーム、ガンジファとスペイン のオンブルの間には、よく似たところがいくつかあります。このためインド起源説が行われ たでのでしょうが、ブルックリン博物館長のキューリンという研究家は、逆にヨーロッパの カードがインドのカードに影響を与えたのだと起源説を否定しています。

   インドのカードの特徴、それは他のどの国のカードとも違って、その形が円形であることで す。大きさは直径二センチから十二センチくらいまでいろいろあります。材質は上等の品に なると象牙や亀の甲を使ったものに螺鈿や金銀細工を施したものがあるそうですが、普通は うすいヘギのような木の皮や、動物の皮、画布のようなものに、うるしで手描きしたものを 使っています。


 札種化身札(王)大臣札シンボル
マトゥスヤ Matsya魚の神










姿
クールマ Kurma亀の神
ヴァーラーハ Varahaイノシシの神イノシシ
ナルシュムハ Narshmha半人半ライオンライオン
ヴァーマナ Vamana小ビトの神水がめ
パラシュラーマ Parashrama軍神戦いの斧
ラマ Ramaラマ神弓と矢、ヒトまたは猿の神
クリシュナ Krishnaクリシュナ神円盤、牛
ブッダ Buddhaブッダ神貝がら
10カルキ Kalki馬を伴った神剣、馬


   インドではカードのことをふつうガンジファ(Ganjifa)と呼びます。ガンジファには二つの 系統があって、ヒンドゥー教徒の間では、ダッシュアバタルといい、モーグルまたは回教徒 の間では、チャングカンチャン、チャンガラニ、あるいは単にガンジファとよばれています。

   私が手に入れたインド製のカードには Rules of Ganjifa という英文のパンフレットが入っ ています。遊び方の説明は細かいところ(たとえば切札の強弱の設定など)がよくわからな いので須賀、ウンスンカルタの遊び方にひどくよく似ている、トリック・テーキング・ゲー ムの一種にはちがいありません。

   種類によって、カードの位がちがいます。1から5までの種類(つまりマトゥスヤからヴァ ーマナまで)はその強さが上から、王、大臣、12345678910となり、6から10まで の種類では、王、大臣、10987654321の逆順になります。このように種類の強さが 逆になるルールは、オンブル、タロッコとともに古代ゲームに共通の現象です。

   ヒンドゥー系のガンジファの最もポピュラーな形式は、百二十枚が一組になっているもので す。十種類の札が十二枚ずつあります。私の買ったダッシュアバタル・ガンジファではカー ドの構成は前頁の図のようになっています。

   これらの化身は、人間の進化のプロセスを表していて、水中の生物が個性をもった人格とな り、また混沌の中へ戻るという、生命のサイクルをあらわしているのだそうです。十組のス ーツはそれぞれヴィシュヌ神の十の化身(アヴァターラ)でできあがっています。ヴィシュ ヌ神というのは、世界創造主ヴラフマー、守護神ヴィシュヌ、破壊神シヴァの三神一体を説 くヒンドゥー教の神の一人です。

   インドのガンジファのゲームでおもしろいのは、日のあかるいうちと、夜になってからでは、 切札の種類が変わってくることです。


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